ストレッチは、身体の柔軟性を高めたり、疲労回復をするための柔軟性トレーニングとして取り入れられています。しかし、筋肉を伸ばせばいいわけではなく、目的に合わせて正しくストレッチする必要があります。
ストレッチは大きく分けて静的ストレッチ、動的ストレッチに分けられます。それぞれのストレッチ方法のメリットやデメリットについて解説します。また、PNFストレッチという近年多用されているストレッチ方法についても紹介します。
目次
ストレッチの分類
ストレッチの種類を目的や効果に合わせて正しく選択することが必要です。
細かく分けると、スタティックストレッチ、ダイナミックストレッチ、バリスティックストレッチ、そしてPNFストレッチの4種類のストレッチがあり、それぞれの種類によって目的や効果が異なります。
ストレッチ方法
ストレッチの方法は2つに分けることができます。
- 能動的(アクティブ)ストレッチ:自ら力を発揮してストレッチすること。
- 受動的(パッシブ)ストレッチ:パートナーの力を借りてストレッチすること。
ストレッチの種類
ストレッチの種類は、静的ストレッチ、動的ストレッチ、PNFストレッチがあり、動的ストレッチはダイナミックストレッチとバリスティックストレッチに分けることができます。
- 静的ストレッチ:反動を使わずにゆっくりとストレッチすること。
- 動的ストレッチ:リズミカルに身体を動かしながらストレッチすること。
- PNFストレッチ:パートナーの力を借りて筋肉の緊張と弛緩を繰り返してストレッチすること。
ストレッチの主な目的と効果
ストレッチを行う目的は、主に次のように分けられます。
- 静的柔軟性の改善:身体の柔らかさ、関節の可動域の改善。
- 動的柔軟性の改善:動きのしなやかさ、動きやすさの改善
- 疲労回復・リラックス:筋肉の緊張を和らげること。
- ケガ予防:運動中の損傷予防や怪我をしにくい身体づくり。
- パフォーマンス向上:スポーツにおけるパフォーマンス向上。
- ウォーミングアップ:運動前の身体の準備。
- クールダウン:運動直後の身体のケア。
ストレッチ種類別の目的と効果は、次の通りです。
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スタティックストレッチ
反動や弾みをつけずに、一定の方向にゆっくり可動域を広げていく静的ストレッチです。深部体温が最大限に高められているときに行うのが理想的で、全身をリラックスさせながら筋肉を弛緩させることが大切です。
運動後のクールダウンに有効で、一般的に座位(座った状態)や臥位(寝そべった状態)で行います。
【スタティックストレッチのやり方】
呼吸を止めずにゆっくりと一定のスピードで行い、最終姿勢で15~30秒キープします。
スタティックストレッチのメリット
- 静的柔軟性(身体の柔らかさ、関節可動域)の向上。
- 心拍数や筋温を下げるので、運動後のクールダウンに向いている。
- 副交感神経が刺激されるので、リラックス効果がある。
- 疲労して縮まった筋肉をしっかり伸ばすことで血液循環が良くなるので、疲労回復を早めることができる。
- 無理な動きがないので、初心者でも安全に行うことができる。
スタティックストレッチのデメリット
- 筋温や心拍数が下がるので、運動前のウォーミングアップには向いていない。
- 運動前に行うと、筋肉が緩んでパフォーマンスにマイナス影響を与える可能性がある。
- 部位ごとにゆっくりストレッチを行うので、時間がかかる。
ダイナミックストレッチ
身体を動かして筋肉を刺激しながら関節の可動域を広げていく動的ストレッチです。
運動時の動作パターンに適した動きで行います。実践的な基本動作に重点を置くことがポイントです。
運動前のウォーミングアップに有効で、サッカーのブラジル体操などがアクティブストレッチの例です。
【ダイナミックストレッチのやり方】
全身をリズミカルに動かし、徐々に筋肉と頭の反応も良くしながら心拍数や筋温を上げて身体をアクティブにしていきます。
ダイナミックストレッチのメリット
- 動的柔軟性(動きのしなやさか、動きやすさ)の向上。
- 心拍数や筋温が上がるので、運動前のウォーミングアップに向いている。
- 全身の筋肉や関節の働きが活発になるので、運動中の怪我予防やパフォーマンス向上が期待できる。
- 筋肉を収縮させながら拮抗筋を伸長させるので筋群の協調性を高めることができる。
- 競技の実践的な動きを取り入れて行うので、競技にスムーズに馴染むことができる。
ダイナミックストレッチのデメリット
- 心拍数や体温が上がるので、運動後のクールダウンや疲労回復には向いていない。
- 勢いをつけすぎると、筋肉や関節を痛めることがある。
- 筋力を必要とするので、初心者では行えない人もいる。
バリスティックストレッチ
反動や弾みをつけて行う動的ストレッチです。
筋肉に瞬間的な刺激を加えることで、可動域の限界までストレッチができます。
アクティブストレッチと同様に、運動前のウォーミングアップに有効で、ラジオ体操などがバリスティックストレッチの例です。
【バリスティックストレッチのやり方】
弾みをつけて、振り子のように反動を使って一定方向に身体を動かします。小さい動きから始めて、徐々に動きを大きくしながら、最大可動域を高めるように行います。
バリスティックストレッチのメリット
- 動的柔軟性(動きのしなやさか、動きやすさ)の向上。
- 心拍数や筋温が上がるので、運動前のウォーミングアップに向いている。
- 反動を使って素早い動作ができるので、筋温の上昇が早い。
- 関節の最大可動域まで伸ばすことができる。
バリスティックストレッチのデメリット
- 伸張反射が働くので、柔軟性の向上は期待できない。
- 運動後のクールダウンや疲労回復に向いていない。
- 反動や弾みを使って行うので、力の加減が難しい。
- 関節の最大可動域まで伸ばすので、筋肉や結合組織に損傷を引き起こす可能性があり、筋肉に傷害歴がある場合には、怪我した部分を再び痛めてしまう危険性がある。
*伸張反射
筋肉に急激な伸張が加わったとき、筋紡錘が感知して筋肉を収縮させる反応を起こすこと。
PNFストレッチ
筋肉は、強い緊張を与えた後に緩む特性があります。PNFストレッチは、このような筋肉の特性(神経生理学的作用)を使って、柔軟性を高めていきます。
パートナーの力を借りて、筋肉の緊張とリラックスを繰り返して行います。
筋肉に刺激を与えて収縮させた後、収縮した筋肉をストレッチによって伸展させます。これを繰り返すことで脳神経と筋肉の結びつきを活性化することが可能です。
リハビリや関節可動域を短時間で効果的に広げるために有効で、ホールド・リラックス法とコントラクト・リラックス法があります。
【PNFストレッチのやり方】
PNFストレッチは、3つのフェーズに分けて行われます。
- 収縮:ストレッチを行う部位に力をかけ、最大限収縮させる。
- 弛緩:収縮させたあと、息を吐き出して一気に脱力し、弛緩させる。
- 伸張:静的&受動的ストレッチをして伸張させる。
*弛緩
緊張していたものの緊張がゆるむこと。
ホールド・リラックス法
主に目的とする筋肉に痛みがある場合に行われます。
伸ばしたい筋肉を等尺性収縮(ホールド)させて、その後ストレッチ(リラックス)することによって関節可動域を広げていきます。
順序:予備伸張 → 等尺性収縮 → 弛緩 → 伸張
- (伸張)10秒間、目的とする筋肉を静的&受動的ストレッチする。
- (収縮)6秒間、目的とする筋肉に抵抗をかけ、等尺性収縮させる。
- (弛緩)1~2秒間、目的とする筋肉を脱力させて、弛緩させる。
- (伸張)30秒間、対象とする筋肉を静的&受動的ストレッチする。
*等尺性収縮
筋の長さが変わらないままで力を発揮する方法で、関節の動きが無いのが特徴です。
コントラクト・リラックス法
主に目的とする筋肉に痛みがない場合に行われます。
伸ばしたい筋肉を等張性収縮(コントラクト)させ、その後ストレッチ(リラックス)することによって関節可動域を広げていきます。
順序:予備伸張 → 等張性収縮 → 弛緩 → 伸張
- (伸張)10秒間、目的とする筋肉を静的&受動的ストレッチする。
- (収縮)6秒間、目的とする筋肉の拮抗筋に抵抗をかけ、等張性収縮させる。
- (弛緩)1~2秒間、目的とする筋肉を脱力させて、弛緩させる。
- (伸張)30秒間、対象とする筋肉を静的&受動的ストレッチする。
*等張性収縮
一定の力をかけながら関節を動かす方法で、力を出す時に関節の動きを伴います。
PNFストレッチのメリット
- 柔軟性を高めると同時に筋力も鍛えることができる。
- 即効性があり、短時間で効果的に関節可動域を広げることができる。
- 痛みがある場合も、負荷をコントロールしながら行えるので、リハビリにも向いている。
PNFストレッチのデメリット
- 安全に正しく行うためには熟練したパートナーが必要になる。
- 筋肉が急激に緩んでしまうので、運動前のウォーミングアップには向いていない。
- 筋力を使うので運動後のクールダウンにも向いていない。
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まとめ
ストレッチを行うときに注意しなければいけないのは、正しく行わなければ損傷のリスクがあるということです。
ストレッチは、原則として深部体温が上がった状態で行います。筋肉が冷えて固まっている状態で無理に伸ばすと筋肉や腱・靭帯を損傷してしまう可能性があります。
ストレッチの前に軽いジョギングやエアロバイク、または軽い関節運動をして筋温を十分に上げてから行うのが理想です。