試合で最大限の力を発揮するための栄養と食事方法について解説します。
目次
試合に必要なエネルギーと栄養素
どんな競技でも、試合では多くのエネルギーが必要です。このエネルギーをしっかり身体に蓄え、疲労がない状態で試合にのぞむことが大切です。
身体のエネルギー源となるのが、*グリコーゲンです。
食べた糖質が身体に入ると、すぐに使われない糖質は、グリコーゲンとなって肝臓と筋肉に蓄えられます。
*グルコース(ブドウ糖)のかたまりであるグリコーゲンも、糖質と同じく、車のガソリンに例えられます。車はガソリンがあるうちは動きますが、動くほどガソリンが減っていき、なくなると止まります。人間も同じで、動くほどグリコーゲンは減っていき、動けなくなっていきます。
*グリコーゲン
グルコース(ブドウ糖)が多数結合したもので、消化吸収されたグルコースがすぐに使われず、主に肝臓と筋肉に蓄えられたものです。必要に応じてグルコースに分解されて血液中に取り込まれます。
*グルコース
穀物、果物、ハチミツなどに多く含まれています。糖質の中では最も速く消化・吸収され、すぐにエネルギー源として利用できます。
≪合わせて読む↑≫
グリコーゲン
体内のグリコーゲンは、肝臓に100g程度、筋肉に250g~300gが蓄えられています。アスリートの筋肉には約500g以上も蓄えることができます。
筋肉量が増えると、その分だけグリコーゲン貯蔵量を増やすことができます。
普段から運動を続けていると、筋肉が増えるだけではなく、筋肉がグルコース(ブドウ糖)を取り込みやすくなるので、グリコーゲン貯蔵量を増やすことができます。
筋肉や肝臓のグリコーゲンが不足すると、アスリートは最大運動能力のおよそ50%でしか力を発揮できないことが知られています。
グリコーゲン貯蔵量が多いということは、それだけたくさん動けるということなので、グリコーゲンを蓄えておくことが重要です。
ビタミンB₁
ビタミンB₁は、糖質をエネルギー源として利用するときに、重要な働きをするビタミンです。ビタミンB₁はが不足すると糖質の代謝がうまくいかなくなったり、長時間の運動に耐えられなかったり、疲労の回復が遅れたりします。
クエン酸
クエン酸は、グリコーゲンの貯蔵を増やしたり、疲労回復を促進させます。クエン酸は、柑橘系の果物や、梅干し、キムチなどに多く含まれています。おにぎりの具に梅干しを入れたり、料理にレモンをかけるなど、工夫次第でクエン酸を摂ることができます。
クエン酸とビタミンB₁を一緒に摂ると、エネルギー産生と疲労回復により効果的です。
試合前の食事
試合前は、エネルギーを蓄えるために糖質中心の食事に切り替えます。
グリコーゲンローディング
試合数日前から、試合日まで、通常のバランスのよい食事から、糖質を中心とする食事に切り替える方法をグリコーゲンローディング(カーボローディング)といいます。
糖質中心の食事をすることで、身体にエネルギー源となるグリコーゲンを蓄え、持久力をアップさせるので、サッカーやマラソンなど持久系の競技や連戦の場合には有効です。しかし、重量挙げなど筋力系の競技には適していません。
エネルギー源となる主な栄養素には、糖質と脂質がありますが、糖質はエネルギーに変わる時間が脂質よりも短くて済むという利点があります。
具体的には、試合数日前から前日までの食事内容を次のことを意識します。
➊ 主食を毎食いつもより増やす
ご飯、パン、麺類などを増やすことで、糖質を多く摂り、グリコーゲンを蓄えます。
➋ 主菜を減らす
肉や魚などのたんぱく質の量を減らします。たんぱく質は成長にも必要なので、「全く摂らない」のではなく、「減らす」のです。
➌ 脂質は控える
脂質のエネルギー分は、主食(糖質)にまわして食事メニューをつくります。そのため、揚げ物や油を使った炒めものなどはさけます。
➍ ビタミンB₁を摂る
糖質の代謝を助ける役割をもつほか、疲労回復にも効果のあるビタミンB₁は、グリコーゲンを使うために必要なビタミンです。ビタミンB₁を摂ることで、試合前にしっかり疲労回復しておくことも必要です。
グリコーゲンローディングの例:
日曜日に試合の場合
木曜日~土曜日
試合3日前から、糖質中心の食事に切り替えます。ご飯、麺類、果物などを普段より多くして、肉や魚、野菜は控えめにします。
日曜日(試合当日)
試合当日の食事も、おにぎりやうどん、果物など糖質を中心にして消化のよいものを摂ります。
年齢や競技レベルによって、試合の何日前からがよいかは変わります。
例えば、成長期の選手は、成長するために必要なたんぱく質は摂りたいので、試合前日からこの食事を意識するとよいでしょう。
小中学生がグリコーゲンローディングを始める場合には、前日からのスタートにします。試合後の夕食はたんぱく質中心の食事にして、翌日から通常の食事に戻します。
試合前日の食事
➊ 糖質中心の食事にする
エネルギーとなる糖質を中心に摂ります。主食でも油を使ったパスタ、クロワッサンなどはさけます。
➋ 脂質は摂らない
消化に時間がかかる脂質は摂らないようにします。
➌ 食物繊維はさける
お腹にガスがたまらないようにします。
➍ 水分を摂る
水分補給は試合前日でも大切です。
➎ 塩分を摂る
特に気温や湿度が高い場合は、食事でも意識します。
➏ 生ものはさける
食中毒などの予防のため、試合前はさけます。
試合当日の食事
試合当日は、試合開始時間の3時間~3時間半前に食事をします。
試合時間の関係で、その時間に食事ができない場合は、遅くとも2時間前までにはします。その際、消化のはやいものを選びます。
試合当日は、試合前日と同様の食事を摂ります。
試合前に食べ過ぎるのはよくありませんが、試合前にお腹がすいてしまうのも問題です。適量を知るために、普段の練習時に試してみることが必要です。
『試合の開始時間に合わせた食事の摂り方』
時間が早い場合(午前7時試合開始)
午前5時 :量を少なめにした糖質中心の朝食
午前7時 :試合(1時間)
午前8時 :終了後すぐに軽食で栄養補給
午後12時:たんぱく質中心の昼食で回復
午前7時という朝早くからの場合、3時間~3時間半前の朝食がベストですが、起きる時間が早すぎるので、2時間前の5時朝食にして、消化のよいものにし、量を少し減らします。
昼前の試合の場合(午前11時試合開始)
午前7時30分:糖質中心の朝食
午前11時:試合(1時間)
午後12時:終了後すぐに果汁ジュースなどで栄養補給
午後12時30分:たんぱく質中心の昼食で回復
午前遅めの試合は、試合開始3時間半前に朝食を摂ることで対応できます。試合後ひと休みしてから30分以内にたんぱく質中心の昼食を摂ります。
昼直後の試合の場合(14時試合開始)
午前8時:バナナと牛乳など軽い朝食
午前10時30分:糖質中心の朝食
14時:試合(1時間)
15時:終了後すぐにたんぱく質中心の昼食で回復
午後早めの試合には、朝食2回で対応します。早めに軽い朝食を食べて、その後に糖質中心朝食。昼食は、試合後すぐにたんぱく質中心で摂ります。
≪合わせて読む↑≫