持久力を知ろう!全身持久力の指標と測定方法を比較・解説!

心拍数、 最大酸素摂取量(VO₂MAX)、無酸素性作業閾値(AT)、乳酸性作業閾値(LT)など、全身持久力トレーニングの指標と測定方法について解説します。

全身性持久力とは?

持久力とは、一定強度の運動を長時間続ける能力のことです。そして、全身持久力とは、全身運動の持続力を指します。

スポーツの種目によって必要となる持久力のレベルは異なりますが、消費エネルギー量が多い競技においては、全身持久力が非常に重要な体力要素のひとつになります。

全身持久力は有酸素性能力ともいわれ、酸素摂取機能がポイントとなります。
呼吸によって取り込んだ酸素を筋肉に運ぶ呼吸循環器系の能力と、その酸素を使ってエネルギーをつくり出す筋肉系の代謝能力があります。

持久力の指標となる有酸素性能力の計測には、ほとんどの場合、専門機器を用いた測定が必要になります。しかし、実際には測定可能な施設やコストに限りがあるので、一般的に専門機器を用いずに推定値を計測します

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心拍数

心拍数とは、人間の身体が全身に血液を送り出す際、心臓が1分間に拍動する回数のことをいいます。心拍数を把握することは、有酸素運動を行ううえで、強度設定やトレーニング効果を知るために重要になります。

心拍数(脈拍数)の計測方法は、手首の親指の付け根を通る動脈に、人差し指・中指・薬指を3本並べて当て、1分間の脈拍の回数を数えます。30秒間数えて2倍、もしくは15秒数えて4倍する方法もあります。

最高心拍数

運動するときには、多量の酸素を運ぶ必要があるため、心臓から送り出される血液量も多くなります。もちろん、運動の強度が上がれば上がるほど、心拍数も多くなります。

最高心拍数とは、心拍数の上限であり、血液を全身に送り出すために心臓が1分間に拍動する回数の限界値です。平均的に、年齢が高くなるにつれて、最高心拍数は低くなります。

最高心拍数の計算方法

 最高心拍数=220 ー 年齢 

例:25歳の人の場合
計算:220ー25=195 最高心拍数:195拍/分

心拍予備量

トレーニングの強度設定に広く用いられているのが心拍予備量です。運動時に、どのくらいの心拍数で運動強度を維持するべきのか、その心拍数でどの程度のトレーニング効果が見込めるかなど、有酸素運動の重要な指標のひとつです。

心拍数には上限がある通り、下限もあります。心拍数ゼロでは心臓が動いていない状態なので、生命を維持するための心拍数の下限が安静時心拍数です。健康な成人の場合、60~80拍/分とされています。安静時心拍数は、寝た状態やイスに座った状態で計測します。

心拍予備量は、最高心拍数と安静時心拍数の差で、運動時の心拍数の下限から上限までの量です。

心拍予備量の計算方法

 心拍予備量=最高心拍数 ー 安静時心拍数 

例:25歳、安静時心数が60拍/分の場合
最高心拍数:220ー25=195 安静時心拍数:60拍/分
計算:195 ー 60=135 心拍予備量:135拍/分

最大酸素摂取量(VO₂MAX)

運動するとき、呼吸によって体内に取り込まれた酸素は全身に運ばれ、エネルギーがつくられます。1分間に取り込む酸素の量を酸素摂取量といい、その最大値酸素最大摂取量VO₂MAX)といいます。

酸素最大摂取量(VO₂MAX)が多ければ、より多くのエネルギーを持続して使えるので、強度の高い運動をより長く続けることができます。したがって、最大酸素摂取量は全身持久力を測る重要な指標となります。

最大酸素摂取量(VO₂MAX)の測定方法

・トレッドミル(ランニングマシン)や自転車エルゴメーターを使って測定
専用マスクを装着して運動中の酸素摂取量を呼気ガス分析によって測定し、最大酸素摂取量(VO₂MAX)の値を導き出します。

推定最大酸素摂取量

最大酸素摂取量(VO₂MAX)を測定するには、持久力の限界まで運動しなければいけないうえに、専門機器が必要となるために測定は容易ではありません。
そこで、最大酸素摂取量(VO₂MAX)を推定で求める、推定最大酸素摂取量が一般的に用いられます。

酸素最大摂取量(VO₂MAX)の推定方法

・心拍数比:最大心拍数と安静時心拍数から計算します。

 15×最大心拍数(220-年齢)÷安静時心拍数 

・クーパー:12分間走の結果から計算します。

 (12分間走で走った距離(m)ー 505)÷45 

・シャトルラン:20メートルの往復持久走の結果から計算します。

最大酸素摂取量(VO₂MAX)のスコア

VO₂MAXスコア(男性)
VO₂MAXスコア(女性)

LT値とAT値

長距離のランニングなど、運動中にだんだん強度を上げていく途中で、急激に身体がきつくなり、ペースを上げることも、ペースを長く維持することも難しくなってくるポイントがあります。

そのポイントの運動強度をAT値(無酸素性作業閾値)、そのポイントの数値をLT値(乳酸性作業閾値)といいます。

これらの値が高いほど、全身持久力に優れていることを示します。
トレーニングによってLT値(乳酸性作業閾値)やAT値(無酸素性作業閾値)を上げることができれば、運動中に段階的に強度を上げていっても耐えられる能力が高まります。

AT値(無酸素性作業閾値)

有酸素運動から無酸素運動に切り替わる転換点の値です。

長距離ランニングなど、全身持久系の運動を続けるためには、酸素を継続して筋肉に送り届ける必要があります。しかし、徐々にスピードを上げていくと、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなっていきます。
そして、あるポイントを境に、脂肪を主なエネルギー源とする有酸素運動から、糖質を主なエネルギー源とする無酸素運動へと切り替わります。「酸素を使う強度の運動」から、「酸素を使わない強度の運動」へと転換するのです。

このポイントの運動強度のことをAT値(無酸素性作業閾値)といいます。

LT値(乳酸性作業閾値)

長距離ランニングなどの運動中、低い強度までは血中の乳酸濃度に変化が見られませんが、ある一定強度を超えると血中の乳酸濃度が急激に高まってくるポイントがあり、その値のことをLT値(乳酸性作業閾値)といいます。

筋肉には遅筋線維と速筋線維があり、低い強度の運動では、持久性に優れている遅筋線維が優先的に使われます。
しかし、運動強度が上がってくると大きな力を発揮することができる速筋繊維が動員されて、そのエネルギー源となるの利用が高まります。
糖の利用が高まると、糖を分解する過程に発生する乳酸が多くなります。

血中の乳酸濃度が高まるということは、速筋繊維が多く使われていて、糖の分解が高まっていることを意味します。速筋線維の動員による糖の分解が高まってくる運動強度の数値が、LT値(乳酸性作業閾値)です。

LT値(乳酸性作業閾値)の測定方法

・ランニング測定
専門機関で測定します。トレッドミル上で3~5分間のランニングを行い、その時の血中乳酸濃度を測定します。

・心拍数で計測
心拍数比から測定します。個人差もあり精度は高くないので、あくまで目安として参考にします。

 (220ー年齢ー安静時心拍数)×0.75+安静時心拍数 

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まとめ

あらゆるスポーツで重要となる全身持久力。
全身持久力を向上するためには、自らの能力を知ることが一番の近道です。筋力トレーニングと違って成果が目に見えずにわかりづらいので、まずは数字で自分のキャパシティーを知ることができれば目標設定がいやすくなります。

しかし、正確に測定するためには専門機関を訪れる必要があり、ハードルも上がります。アスリートレベルでコンペティションを控えている場合はおススメしますが、それ以外の場合は、まずは自力でそれぞれの指標の推定値を出して、それを基準にトレーニングを進行していくので十分です。