【サッカーのヒント】審判との駆け引きで試合を支配できる?

試合の勝敗のカギを握るのは審判です。
審判も人間なので、いつでも正しいジャッジをするわけではありません。ただ審判に従っているだけでは、損をしてしまう場合があります。「勝つために利用できるものは利用する」気持ちで試合に臨まなければ、特に海外では通用しなくなるでしょう。

審判へのリスペクトを前提として、その中でいかに上手に審判と駆け引きをして有利に試合を進めていけるかを考えていきましょう。

審判を味方につける

サッカーの試合では、審判の役割は非常に重要になっていて、審判の判定次第で大事な試合の結果が不本意に左右されてしまうことがあります。

今ではVARが活用されて、厳正なジャッジが行われるようになっていますが、それは世界のトップコンペティションでの話で、サッカーの競技人口の99%はVARなしで試合をします。ここでは、VARがない前提で話をします。

試合の主役は選手であるのにも関わらず、度々審判が主役になって試合が終わってしまうことがあります。試合後のコメントやメディアの話題が審判のジャッジについてになってしまうと、せっかくのエンターテイメントが台無しになりますよね。

それほど、審判の責任は大きいということです。審判自身もその重要性はわかっており、大きい試合になればなるほど、プレッシャーは大きくなります。

試合に向けて、選手はもちろん緊張しますが、実は審判が一番緊張しているのです審判はジャッジするだけの立場ではなく、両チームからもサポーターからもメディアからもジャッジされる立場なのです。

審判はロボットではなく、感情を持った人間です。公平なジャッジをされるように訓練はしていますが、好き嫌いもありますし、ミスを犯すこともあります。

日本では、審判は絶対的な存在で、「審判の判定は絶対」「審判に逆らってはいけない」と教育されます。倫理的にはいいことですが、勝負の世界では、勝つために使える要素は全て使うのが鉄則です。その大きな要素が審判なのです。

高校サッカーを見ると、明らかにおかしな判定でペナルティキックをとられても、当たり前のように誰も審判に対して抗議をしません。育成年代で一番大切なのは、勝敗よりも人格形成ですが、おかしいなと思ったことについて主張できないのは、スポーツ選手としても社会人としてもよくありません。
抗議をしたところで判定はくつがえらないですが、泣き寝入りするよりは、声を上げて審判に対して意思表示をすることが必要です。それによって、以降の試合の雰囲気が変わっていきます。審判にも罪悪感があるのです。

審判は決して偉い存在ではないです。あくまでサッカーの試合の主役は選手であり、選手が一番偉いのです。根本的に考え方を改め、審判の存在を「絶対的な存在」から「駆け引きの相手」「ゲームの一部」と切り替えて捉えるのがいいでしょう。

そのことを理解したうえで、審判との駆け引きを考えましょう。

審判にも、いろいろなタイプがいます。チャンピオンズリーグやワールドカップに出るような、エリートの審判はかなり手ごわいですが、それ以外の審判のレベルはほぼ同じで、間違いだらけのジャッジをしているのです。

例えば、東京オリンピックの審判はひどくて、見る人が見れば「おかしいな」と思ったのは一目瞭然だと思います。1戦目で各国の選手たちは審判の緩さに気づき、「これは騙せるな」と察して、わざとファウルをとってもらうシミュレーションをあからさまに使い始めました。選手も試合の中で審判の性質を判断し、それに合わせて、アクションを変えているのです。

そんな中で、バカ正直にプレーしているのは賢くないですよね。
サッカーは11人対11人ですが、ピッチの中にいるのは、選手22人+主審1人の23人です。主審のこともゲームの一部と捉えると、主審を味方につければ、12人対11人になるのです。

では、具体的にどのような場面で審判と駆け引きができるのか見ていきましょう。

最初のファウルで有利になる

試合が始まった直後のファウルでカードはほぼ出ません。
特にレッドカードは出す勇気がないのです。退場者が出ると、事実上エンターテイメントとしてのサッカーの試合は台無しになりますよね。試合を円滑に進めることも審判の役割なので、最初のジャッジで退場者を出すことは望みません。退場者はなるべく出したくないというのが審判の本音です。

ですから、開始直後のジャッジは寛容になりがちなのです。イエローカードに関しても、1回目のイエローカードでその試合のカードの基準が決まってしまうので、審判も慎重になります。もし最初に、軽いファウルでイエローカードを出してしまったら、その後の展開でも、矛盾を生じさせないために軽いファウルでイエローカードを出さなければいけなくなり、試合のコントロールが難しくなり自分で自分の首を絞めてしまうことになります。

ただ注意が必要なのは、わずかですが、審判によっては試合を引き締めるために、最初にイエローカードを出して、審判の威厳を保ち、存在感を出してくることもあります。いずれにしても、レッドカードは出すことは滅多にないです。

そこで、賢いディフェンダーなどは、自分のマークのフォワードの選手に対して、ファーストコンタクトでかなり強く削ってきます。通常ならレッドカードが出そうな悪質なファウルでも開始直後なので出ないことを知っているのです。

開始早々削られたフォワードの選手は、負傷しなかったとしても、ファーストコンタクトの衝撃が頭に残ってビビりながらプレーをすることになります。ディフェンダーは最初に自分の存在感を示して、「自由にさせないぞ」というメッセージを残しているのです。戦意を消失させたり、相手をナーバスにさせることが目的です。また、フォワードの選手のリアクションを探っている場合もあります。
少しでも有利になるために、仕掛けられる要素はすべて使っていくのが勝負といものです。

このように、開始直後だからこそ仕掛けられる心理ゲームがあります。審判との駆け引きの中で、同じルール内でも、時間帯によって判定が変わることがあるということを覚えておきましょう。

(注)わざと相手を傷つけるというのは、許らせれない行為です。
特に守備の選手というのは、そのぐらいの気持ちと迫力が必要だということです。

審判を混乱させる

タッチラインやゴールライン際でなどで、混戦の末ラインを割ったボールがどっちボールなのか、審判にとって正しく判定するのは難しいです。テレビでアップのスロー再生でやっとわかるジャッジを、リアルタイムで正確にジャッジできるわけがありません。

明らかに見分けがつくプレー以外は、ラインを割る前に最後に触ったのはどっちなのか、確実にわかっているのは選手のみです。主審も副審も、際どいボールで見分けがつかない場合は選手のリアクションをみて判定を決めてることが多いです。

そのことをわかっていれば、本来ゴールキックのものをコーナーキックに変えることができたり、相手ボールのスローインをマイボールのスローインに変えることもできるのです。「正直」なのはいいことですが、サッカーの試合では「うそ」も必要です。

例えば、ごちゃごちゃしてボールがタッチラインを割った場合、日本人選手の多くは、「マイボール!」と叫んで審判に判断を委ねます。しかし、外国の選手はそんなことはせずに、当然マイボールと決めつけてすぐにボールを拾ってスローインを投げ込みます。
もしくは、あきらかに相手ボールなのにも関わらず、知らぬ顔をしてマイボールにしてしまいます。ひどい選手は、あたかも審判のジャッジが間違っているかのように抗議したりもします。自分が一番わかっているはずなのに、とぼけて平気で嘘をついているのは滑稽にみえますが、選手たちは演じているのです。
こんな細かいところまでも、少しでも有利に立ちたいなら必要なのです。

際どいボールでは、実際誰がラストタッチをしたかに関わらず、「マイボール」なんだとアピールする癖をつけてみましょう。審判もすべてが見えているわけじゃないということを理解して、少しでも得をできるように演技することも必要です。

嘘をつくのは抵抗がありますが、そこもゲームの一部だと認識し、審判と駆け引きしましょう。

(注)やりすぎは反感を買って逆効果なので、あくまでも自然にできるようにしてください。

審判の罪悪感を利用する

審判にも罪悪感があります。ペナルティキックやレッドカードなど、試合を決定づけてしまうジャッジに関しては、かなりナーバスになります。オフサイドも、点につながる場面でのオフサイド判定には慎重にならざるを得ません。

審判の心理として、同じチームに対して2回以上ペナルティキック与えたりやレッドカードを出すことはハードルが高いのです。1度ペナルティキックがあったら、次のペナルティキックは逆のチームに与えることになる可能性が高いです。
また、退場者に関しても、1試合で同チームから2人以上の退場者を出すことはほぼしません。そこまでの勇気は出ないので、なんとなくうまくゲームを進行する傾向があります。ですから、2人目の退場者が出るとしたら、逆のチームから出る可能性のほうが高いのです。
オフサイドについては、副審のジャッジが基本になりますが、1度ギリギリのオフサイドを見逃して点が入ると、副審の頭の中に罪悪感が残り、次からのジャッジに影響がでます。オフサイドは一瞬の判断なので、頭の中にあるものが反映されやすいのです。

まずは、ペナルティキックやレッドカードのジャッジにあった場合は、とにかくチームみんなで猛抗議をしましょう。審判に罪悪感を埋め込むのです。

例えば、前半に自分のチームに退場者が出てしまったときに、その後のゲームプランは一気に変わります。1人少ない状態で試合をするのは完全に不利です。失点しないようにするのに必死で、点をとるのは至難の業になります。ラッキーカウンターを狙うか、セットプレーを中心に点をとりにいくというのが一般的なゲームプランになると思います。

そこで、1人少ない状態で点をとることと、相手選手を退場させることを天秤にかけたときに、まだ試合時間が長く残っているなら、このまま不利な状態で戦うよりも、相手選手を退場させたほうが賢いかもしれません。

わざとファールを誘いにいくプレー、ファールをされたらオーバーリアクションをすることで少しでも、相手にカードがでるような努力をします。

そしてサッカーで一番レッドカードが出やすいのが暴力行為です。ボールあるなしに関わらず、相手を挑発して暴力行為をするように誘導し、相手の手などが当たったら迷いなく痛いフリをして大きく倒れましょう。
乱闘行為では、必ずといっていいほどカードが出ます。審判は事態の収拾のために、見せしめの意味も込めて、カードを出さざるを得ないのです。アトレティコ・マドリードがよくやるように、ゲームをわざと荒らすのもひとつの手段です。

ペナルティキックでも同じです。ペナルティキックで点をとられたあとは、今度はペナルティキックをとってもらいやすくなります。

  • ペナルティエリアに侵入したら、積極的にドリブルで仕掛ける。
  • セットプレーでも、つかまれたアピールをして倒れてみる。
  • ハンドっぽいプレーには、全力でハンドをアピールする。
  • ペナルティエリアで接触があったらすぐに倒れる。

などをして、少しでもペナルティキックをとってもらえる努力をします。

通常な精神状態の審判なら騙せません。しかし、罪悪感がある状態では話は別です。審判の頭の中に少しでも、自分のジャッジへの罪悪感が残っているようなら、そこにつけこまない理由がありません。

「審判の誤審によって、どれだけ自分のチームが被害を被ったか」を試合を通してアピールするのです。ここでは、実際に誤審であったかそうでなかったかは関係ありません。勝つための戦略として、状況に応じて臨機応変に戦い方を見つけていく強かさが必要です。

審判とのコミュニケーションの大切さ

審判にも感情があります。抗議されるのも駆け引きされるのも好きではありません。できることならトラブルなく円滑にゲームを進行したいですし、苦手な選手もいます。

そんな中で、審判を不機嫌にさせてしまうと損をすることがあります。審判の機嫌を損わずに、上手にコミュニケーションをとることが必要です。

例えば、抗議するにしても、キャプテンが抗議するのと、若手の選手が抗議するのでは意味合いが全く違ってきます。

審判もサッカー経験者がほとんどで、やはり実績のある選手には説得力があることがわかっています。実績のない選手のことは下に見ていることが多いです。
ですから、若手や実績のない選手が抗議をすると必要以上にイライラします。逆に、キャプテンやベテラン選手と審判のコミュニケーションはある程度容認されています。

プレーの流れの中で抗議をするのは誰でも構いませんが、若手選手が抗議をしすぎると損をすることが多いので、キャプテンやベテラン選手が割って入って、審判とコミュニケーションをとることが必要です。また、審判も興奮状態になっている状況もあります。そのときは、キャプテンがチームを代表して落ち着いて話をすることによって、キャプテンと審判に信頼関係のようなものが生まれ、話しやすくなります。

抗議だけをして審判を攻撃するのではなく、素直に認めるところは認めたり、審判を煽てたりしながら審判といい関係性をつくることも必要です。その役割を担っているのがキャプテンやベテラン選手で、その選手は「自分がチームの代表として意見を言っている」ということを示しながら、審判とコミュニケーションをとることで、同じ抗議でも効果的に行うことができます。

審判の性質を見極める

審判にもいろいろなタイプの審判がいます。ひとりの人間ですから、性格もさまざまです。いつも審判を意識しながらプレーするのは不可能ですが、開始15分ほどで審判の性格、そしてファウルなどのジャッジ基準を見極めることはできます。

同じルールの中でも、解釈の違いはありますし、尺度も審判によってそれぞれです。
接触プレーにある程度寛容な審判もいますし、厳しい審判もいます。抗議やシミュレーションなどに厳しい審判もいますし、友達のような感覚でコミュニケーションをとってくる審判もいます。

このように、100人いれば100通りのジャッジ基準があって、それもゲームの一部と考えます。リーグ戦を戦っていれば審判も顔見知りになるので、個性がわかってくるでしょう。

審判の性質によって、プレーを変えるというのは勝つためのひとつの手段です。

  • カードを出さない審判なのに、カードを恐れる必要はない。
  • 接触プレーが許容されるなら、その範囲で厳しいチェックをするべき。
  • ファウルをすぐとる審判なら、自分の有利なようにすぐ倒れる。
  • 抗議に厳しい審判には、抗議をしすぎない。
  • 騙されやすい審判は騙していい。
  • フリーキックの壁に不注意な審判なら、見てないうち前進して少しでもボールとの距離を縮める。
  • 優柔不断な主審や副審ならジャッジを待たずにリスタートしてしまう。

など、使える手段はいくらでもあります。少しでも有利になるために、審判の性質も観察して、試合に臨みましょう。

カードを出されないコツ

審判のジャッジはくつがえりません。カードを出したのに、後から取り消しなんてことは、VARがない限りありません。しかし、カード級のファウルをした選手すべてが、カードを出せれているわけではないのです。どこかで逃れている選手がいます。それはどのような場面なのでしょうか。

特に、ガッツリ系の守備の選手はいつも警告や退場のリスクと隣り合わせでプレーをしています。その選手たちはどのようにカードを回避しているのでしょうか。

まず、カード級のファウルをしてしまったら、自分も痛がって倒れることです。肘打ちやタックルなど明らかに自分が悪くても、「実は自分がファウルを受けた側なんだよ」というアピールをするのです。

セルヒオ・ラモス選手やイブラヒモビッチ選手は、暴力的な選手ですが、自分のプレースタイルをよく知ったうえでこの方法をよく使います。
悪質なファウルをしてしまっても、ファウルをしたのがどっちがわからなくなるぐらい自分もリアルに痛がると、審判の確信が100%から80%に下がるのです。そこに自分のチームメイトも加担して擁護したら80%の確信から60%の確信に下がります。
これは、カードを出される前の最後の賭けです。もし運が良ければ、カードが出されないことや、レッドカードがイエローカードになることもあります。

逆に、相手にカードを出させるときは、味方選手が悪質なファウルをされたときに、早くリスタートをしないことです。早くリスタートしてしまうと、出そうとしていたカードも、「まぁ、いいか」ってなってしまう可能性もなきにしもあらずです。
しっかりと審判にもカードを出す時間の余裕を与えて、カードを出しやすい状況をセッティングしてあげましょう。

ベンチゾーンの確保

些細なことですが、アマチュアチームがよく使う方法について紹介します。
試合会場で、ベンチゾーンが事前に振り分けられていない場合は、副審の後ろのベンチゾーンを確保するべきです。一見、どちらのベンチゾーンに陣取っても変わらないと思いがちですが、実は大きな違いがあるのです。

副審はゴールを右手にしたハーフコートのタッチラインが移動範囲ですよね。その副審の背後にあたる側のベンチゾーンに陣取れば、副審に対して無言の圧力をかけることができるのです。また、不利なジャッジをされたときには、抗議もしやすくなります。
副審は、自分の背後でチームに見張られてると思うと、背筋が伸びるというか、「見張ってくるチームに不利なミスジャッジをしたら面倒なことになるな」という心理が働きます。ですから、「際どいボールには、こっちに有利なジャッジをしても向こうに有利なジャッジはしないだろう」と期待できます。

逆サイドのベンチゾーンに陣取ってしまったら、圧力をかけることができません。副審に対して心理的にプレッシャーをかけるために、ベンチゾーンの確保も意識して行うと少しでも試合を有利に進めることができます。

まとめ

審判との駆け引きの例を紹介しましたが、サッカー選手として、一番大切なものは人間性だということを忘れないでください。

あくまでも、サッカーの試合中での騙し合いや駆け引きなので、ピッチの中で使える手段はなんでも使うと割り切って演じてください。ピッチ内での人格とピッチ外の人格は別物であるべきです。ピッチ内では、嘘をついたり、ズルをしても、ピッチ外では誠実な紳士でなければいけません。

試合が終われば、「試合で起こったことは、すべてピッチに置いていく」という気持ちで、悪意のある行為やリスペクトに欠けた言動は試合後まで引きずらないでください。

審判に対しても、試合後にはお互い笑って握手を交わせるように、すべてはエンターテイメントの一部という認識を共有できればいいと思います。

審判や相手チームに敬意を払い、リスペクトする気持ちは忘れずに、試合では勝負に貪欲に全力でプレーすることがサッカーの醍醐味です。

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